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手袋づくり講座「アートな手袋を作ろう」

手袋づくり講座「アートな手袋を作ろう」

できごと

3年目の手袋づくり講座

香川県は日本で唯一の手袋の産地です。この地域で手袋づくりが始まって130年、その歴史と培ってきた技術と手袋づくりという仕事を地域の若者に知って欲しい思いから、高松市の吉田愛服飾専門学校で手袋づくり講座を提供させてもらうようになりました。

今回は「アートな手袋を作ろう・社会への問題提起」と題して、生徒の皆さんに手袋づくりを学んでもらいながら、「アートな手袋」のデザインを考えてもらい、そのデザインを江本手袋で実際に手袋として完成させ見てもらうことで、手袋づくりの面白さと可能性を体験してもらいました。

 

今年は入社3年目になる手袋職人見習いの海香子が手袋づくりの実演と実技講習を担当して、ベテラン職人の久米さんはそのサポート役です。生徒の皆さんの前で堂々と実演する海香子の成長した姿に吉田校長も驚かれていました。

 

講座も3年目になって、なんと自分で手袋を縫い上げられるようになった生徒さんが数名いました。これは本当に凄いことで、手袋の縫製はこれ以上難しい縫製は無いと言われるほど難解なのです。1.5ミリ程度の縫い代で、目印の無い裁断物を複雑な工程を理解して縫い上げるだけでも大変なことです。その甲斐あってか、その生徒さんは縫製技術の国家資格も取得できたそうです。

 

 

「アートな手袋・社会への問題提起」デザイン発表

手袋づくり講座は週1回のペースで全4講です。第1講と第2講では生徒の皆さんが、香川県の手袋づくりと手袋縫製の全体的な流れを、解説動画と手袋職人の縫製実演から学び、第3講までの3週間、個人実習に取り組みます。

第3講では生徒の皆さんが考えた「アートな手袋」のデザインを発表していただき、同時に手袋職人と素材や仕様を確認して、さぁ1週間で江本手袋の手袋職人が実際に手袋を完成させ、第4講で完成したアートな手袋のお披露目を行います。

今回も、生徒の皆さんがたくさんのデザインを発表してくれました。どのデザインもしっかりしたテーマがあって、斬新なアイデアと視点のものばかり。1週間という時間のプレッシャーのなか、手袋職人がどこまで形にできるか、腕の見せ所です。

 

 

いよいよ完成した「アートな手袋」のお披露目

テーマ「海ゴミ」

海を漂うプラスチックやビニール袋を魚やウミガメに思いを寄せて、ウミガメが餌のクラゲと間違えてビニール袋を食べてしまう問題を手袋で表現した作品。実際に行政指定ゴミ袋を素材に使い、ワイヤーで大きなフリルを表現。江本手袋としても初めてポリ袋で手袋を縫い上げる貴重な経験になりました。

 

テーマ「かわいく水仕事」

食器洗いなどの水仕事で、手を守るためにゴム手袋などを使うことがありますが、なかなか可愛いデザインが無いことに着目したデザインです。こちらもリサイクルの観点で、お買い物についてくるビニール製のショッパーを素材に、フリル付き手袋を縫い上げました。手の甲の飾りもバッチリ再現しました。

 

テーマ「衣料の廃棄問題と多様性」

好みが変わったり着なくなった服などを手袋の素材にして、色や形、素材、サイズがバラバラなリボンで個性の違いを表現した作品です。さまざまな素材を継ぎ合わせて手袋に縫い上げるのは手間がかかりますが、だからこそ一つ一つのモノに思い入れが生まれて大切に使える、大量生産、大量廃棄へのアンチテーゼになると思いました。

 

テーマ「手書き離れ」

スマホやパソコンなどの普及によって進んだ若者の手書き離れをコンセプトに、手や指を使わないことで繋がりが断たれ、手がうまく動かなくなった様子を表現した作品。かつて無い斬新なデザインは、既存の手袋の概念を覆す発想に脱帽でした。

 

テーマ「タンスの肥しの活用」

家にある着なくなった着物などを素材に、着物をモチーフにしたデザインの手袋を作るというアイデアです。このデザインも思いもよらない発想で、ベテランの手袋職人も頭を悩ませてなんとか手袋として完成させました。

 

テーマ「大気汚染」

だんだんと汚染されていく様子を手袋のデザインにした作品です。ポイントは指先の形状で、靴のつま先が尖ったデザインをポインテッドトゥと言いますが、ポインテッドフィンガーという指先が尖った新しい手袋のジャンルを生み出す大きなヒントになるかもしれません。

テーマ「ムカデのバスケットグローブ」

冬でも手が冷たくならないバスケットボール用グローブで、ボールを掴みやすくするために手の平はくり抜いたデザインになっています。個人的にムカデのイラストが好きということで、手の甲にリアルでグロテスクな刺繍で再現したムカデモチーフをあしらっています。強烈なインパクトですね。

 

テーマ「もう無くさない」

手袋の片手を無くしてしまうという社会問題に着目したデザインです。江本手袋にも「手袋の片手だけの販売はできますか?」と、お客様から問い合わせがありますが、片手だけだと左右のサイズやフィット感が微妙に違ってしまいますので、なかなか悩ましい問題でした。だったら無くさないようにしよう!というアイデアですね。可愛いペンギンのキャラクターに加えて、使わないときにスナップボタンで左右をまとめる機能と、バッグなどに取り付けられるギミックのアイデアも実用的で素晴らしいです。

 

テーマ「指手袋」

こちらも奇抜なアイデアの、指にはかせる手袋です。小さな手袋なので、余った生地などの活用にピッタリかもしれません。江本手袋からは出てこないアイデアなので、これからの新商品のヒントになると思います。

 

テーマ「資源をムダにしない」

果物などの保護に使われる緩衝材の構造から着想を得たアームカバーのデザインです。裁断時に出る生地の捨ててしまう部分を極力減らすと同時に、サイズを気にせず使えるアームカバーのアイデアで、環境に配慮された素晴らしいユニバーサルデザインだと思います。

 

テーマ「ライブの想い出」

ライブやイベントのグッズ販売などに付いてくるビニール袋などを手袋にしてみました。色々な思い出を手袋にすることで、飾っておくだけでも心が癒されるアイテムになると思います。

 

テーマ「つくる責任、使う責任」

3つのパーツで構成された華やかな6WAYロング手袋のデザインです。それぞれ、一つずつでも手袋やアームカバーとして使え、それぞれ組合せて使えるようになっています。つくる責任は、私たち作り手が「もっと長く愛されるものづくり」に取り組む責任を感じさせてもらいました。とても素晴らしい作品だと思います。

 

今回、作らせてもらったアートな手袋たち

 

 

3年目の手袋づくり講座を終えて

地域に根付いた手袋づくりを伝え、私たちの手袋づくりの技術が若い生徒の皆さんの学びに役立てたいと思い、取り組んでいる手袋づくり講座。3年目となり、生徒の皆さんの成長した姿を見ることが出来て、本当に取り組んできて良かったと実感しています。

ですが、私たちのほうがたくさんのモノを受け取っている気がしています。

ベテラン職人が生徒の皆さんに手袋づくりの技術を伝える姿は本当に輝いていますし、その姿が職人見習いの新人の目標になって大きな成長につながっています。

また、生徒の皆さんの自由で斬新な発想やアイデアに触れることで、江本手袋に新しい考え方と価値観をもたらしてくれています。

こんな素敵な機会をいただけて、吉田校長と生徒の皆さんに感謝申し上げます。

そして、手袋づくりをもたらしてくれた手袋の神様に感謝します。

ありがとう。

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