VOL .10

娘のコーディネート

コットンのストールが、好き。だって、屋内に入っても、ずっと巻いておけるでしょ。私にとってのストールは、巻くタイプのネックレスのような、そんな感じ。

 近年は、特にファッションに取り入れている。理由は、娘が大きくなったから。もうずいぶんとしっかりしてきて、「抱っこ」とも言わなくなった。抱き上げる時にかがむと、ストールが地面にたれさがるのが嫌で、千尋が生まれてからはほとんどしていなかったのだ。

「ママ、その青いワンピースだったら、この黄色のストールの方がいいよ」

 最近は、私の服装にもいろいろとアドバイスをくれるようになった。

「こっちの水色の方が合うと思うんだけど」

「えー、絶対に黄色がいい!」

 千尋はそう言って、自分が巻くわけでもないのにマスタード色のストールをはなさない。

「ワンピースとストールを青系でそろえて、ワントーンコーデってのをしたいのよ」

 千尋はまだ4歳なので、私の言っていることがわからない様子だ。でも青に黄色を合わせるなんて、私には派手過ぎる。少なくとも水色を選んでおけば、無難で落ち着いたコーディネートになるはずだ。

「ママ、好きって言ってたじゃない」

「何が?」

「行きたいって、昨日言ってた!」

「どこへ?」

 よくしゃべってくれるようになったのはいいけれど、母親なのに娘の言いたいことがわからないことが、時々ある。

「忘れちゃったけど、昨日、テレビで見たやつ!」

 何のことだろう。昨日、テレビで何か……、

「もしかして、スウェーデンのこと?」

 昨晩、北欧特集をテレビで見たのだ。

「そう、その国!」

ムーミンが出てきたりして、千尋も興味津々になっていた。

「でも、スウェーデンとストールに何の関係が……あっ!」

 思い出した。スウェーデンの国旗は、青地に黄色の十字が入ってるんだ。

「よく覚えてたねぇ」

「黄色のストールにすれば、スウェーデンになれるよ!」

 さっきまでありえないと思っていたマスタードのストールを、促されるままに巻いてみる。

「ほらね。いい感じ」

 千尋が姿見の前に立つ私の後ろから、ひょっこり顔を出して得意げな声をあげた。

「確かに、悪くないかも……」

 やっぱり落ち着きには欠けるけれど、だんだんとそんな気がしてきた。

「ママ、急がなきゃ。おばあちゃん、待ってるよ」

 今日は、母と3人で食事に行くのだ。めいっぱいオシャレして集まるのが、我が家のルールになっている。

 気が付くと、そのまま外に出ていた。

「ママ、かわいい。似合ってる!」

私らしくないコーディネートではあるけれど、今日はこれでいいか。私の専属コーディネーターのお墨付きだしね。

「佩」とは

佩(ハク)とは、江本手袋が「喜び合える手袋づくり」を目指して取り組む手袋ブランドです。

職人を守り育て、地域の手袋づくり文化を未来へと受け継いでいくために、扱う素材、デザインの考え方、色展開、つくる量、手袋職人の社会的地位、そして地域との関係性など、これまでの手袋づくりの全てを見直しました。

江本手袋に勤める65歳の職人は、中学卒業からずっと手袋を作り続けています。

佩は、このような本物の職人たちの手仕事をお届けします。

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